法律相談Q&A(5) 就業規則の変更(従業員に不利益がない変更の場合)(人事・労務)

【Q】
当社は、10人以上の従業員を使用しており、既に就業規則を労働基準監督署に届け出ています。この度、従業員の基本給のベースアップを検討しており、賃金を定める就業規則を変更することを考えています。就業規則を変更する場合には、どのような手続が必要となりますか。

【A】
従業員にとって不利益がない就業規則の変更であれば、①従業員の意見聴取の手続を履行したうえ、②事業場で変更後の就業規則を周知させ、③変更後の就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。

(理由)
1 意見聴取の手続
就業規則の作成・変更にあたっては、A当該事業場に、労働者の過半数で組織される労働組合がある場合においてはその労働組合、B労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(従業員代表)の意見を聴く必要があるとされています(労働基準法第90条1項)。
したがって、まずは、A労働組合又はB従業員代表の意見を聴く必要があります。
この点、「意見を聴く」とは、文字どおり意見を聴けば良く、同意を得たり、話し合って交渉をしたりする必要はないとされています。すなわち、A又はBの者が「変更に反対する」という意見であっても、その意見を聴けば、労働基準法第90条第1項に基づく意見聴取の手続は履行したこととなります。
ただし、従業員にとって不利益な変更をする場合は、別途、就業規則の不利益変更の有効性が問題となりますが、この点については、別稿にて取り上げます。
そして、本件においては、基本給のベースアップは、従業員に不利益はない変更であるため、意見聴取の手続を行えばよく、不利益変更の有効性の問題は生じません。
2 変更後の就業規則の周知
意見聴取の手続を行った後に、変更後の就業規則を、事業場において周知する必要があります(労働基準法第106条1項)。
この周知の方法については、従業員が見ようと思えばいつでも見られる方法を取る必要があります。具体的には、ⅰ常時、各事業場の見やすいところ(例えば、職場、休憩室又は食堂などの従業員が自由に立ち入ることのできる場所)に掲示し、又は備え付けること、ⅱ従業員に配布すること、またはⅲPC上で閲覧可能にすることなどの方法が考えられます(労働基準法施行規則第52条の2参照)。
3 労働基準監督署への届出
意見聴取の手続を行った後に、意見聴取の結果を記した書面を添付して、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第90条2項、第89条)。
届出の具体的な書式は、東京労働局のホームページに掲示されています

(参照)
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/standard/relation/11.pdf

以 上