日本弁護士連合会副会長退任のご報告

さて、私は、日本弁護士連合会(日弁連)の令和2年度の副会長として、昨年4月1日から、弁護士会館(千代田区霞が関)にて執務を行ってまいりましたが、本年3月31日、任期満了により退任いたしました。在任中は、公私にわたり一方ならぬご厚情を賜りまして、ありがとうございました。

令和2年度は、当初から新型コロナウイルス感染症への対策を迫られた年度でした。昨年4月7日、東京を含む6都府県に緊急事態宣言が発令され、4月16日、対象地域が全国に広がり、市民の生活や事業者の業務にも、著しい制約が生じました。この緊急事態宣言は、5月25日まで続きました。
日弁連としては、かかる事態に対処するため、全国統一無料ダイヤルを設置して、市民の皆さまからの申込みを受け付け、全国各都道府県の弁護士会と連携して、無料法律相談を実施しました。昨年4月から7月までの間に受けた相談の内訳としては、労働問題(30%)と消費者問題(21%)で半数を超えました。

新型コロナウイルスの感染拡大は、国民の裁判を受ける権利にも重大な影響を及ぼしました。裁判所では、民事事件、家事事件だけでなく、刑事事件の期日も延期となりました。そのため、民事・家事紛争の解決が遅れ、刑事裁判では身柄拘束が長期化することとなり、国民の人権に大きな影響が生じました。
日弁連は、政府、裁判所、関係機関等に向けて、新型コロナウイルス感染拡大による問題への対処等を求めるために、会長声明や意見書を公表しました。具体的には、刑事収容施設等における感染拡大防止を求めるもの、市民生活に関連して、家賃支払のための住宅確保給付金・失業給付等の積極的な活用を求めるもの、家庭内でのDV・虐待の防止、中小企業に対する緊急融資の改善を求めるものなどです。

また、日弁連は、国際法曹団体にも加入していますが、海外渡航ができないため、その会合は、オンライン会議に切り替えられました。国際法曹協会(IBA)、国際弁護士連盟(UIA)、アジア太平洋法律家協会(LAWASIA)の年次大会に参加したほか、諸外国の弁護士会・法曹団体が参加する国際会議では、日弁連を代表して、新型コロナウイルス感染拡大に対する取り組みを報告しました。各会合においては、裁判所の閉鎖や感染拡大を契機とする人権の制限、司法制度の維持のための弁護士の役割等の共通の課題を認識し、情報交換をすることができました。

最後に、1年間を顧みましても、十分な活動ができず、力不足を感じたところではありますが、多くの機会に皆さまからご支援をいただいたことに対しまして、改めて感謝申し上げます。
これからは、日弁連副会長としての経験を弁護士としての通常の業務に生かし、依頼者の皆さまのために、誠心誠意努めてまいりたいと存じます。引き続き倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

弁護士 上 田 英 友