法律相談Q&A(3) 労働条件の内容-労使慣行(人事・労務)

【Q】
当社では、60分間の休憩を認めていますが、就業規則で定められた休憩時間は50分間です。今後は休憩時間を短縮して、就業規則どおり50分間とすることはできるのでしょうか。

【A】
一定の条件を満たす場合には、60分間の休憩を認めることが「労使慣行」になっており、休憩時間を短縮できない可能性があります。

(理由)
1 労働関係では、長期間にわたって反復継続して行われてきた取扱いが、事実上のルールとして機能することがあり、そのような取扱いを「労使慣行」と言います。

2 このような労使慣行は、労使間の「黙示の合意」または「事実たる慣習」(民法92条)として、労働契約の内容となる場合があり、その場合、使用者は、労使慣行に拘束されことがあります。例えば、定年退職した従業員を嘱託社員として再雇用するということが長期間にわたって反復継続されてきた場合、使用者は、定年退職した従業員を再雇用しなければならないのが原則です。

3 そして、多くの裁判例(大阪高裁平成5年6月25日判決等参照)によれば、大要、以下の要件を満たす場合に、労使慣行が労働契約の内容になっていると判断される傾向にあります。
① 同種の行為または事実が反復継続して行われていること
② 労使双方が、その行為・事実を明示的に排斥していないこと
③ 当該労働条件について決定権ないし裁量権を持つ者が、それに従わなければならないという規範意識を持って従っていたこと
④ 法令等に違反しないこと

4 本件では、60分間の休憩を認めることが「労使慣行」となっている可能性があり、その場合には、休憩時間を短縮できないことになります。もっとも、「労使慣行」と言えるかどうかは、微妙な判断が必要となりますので、従業員に対して休憩時間の変更を命じる前に、弁護士に相談することをお勧めします。

以 上