法律相談Q&A(6) 解雇① 休職期間満了による退職・解雇(人事・労務)

【Q】
現在、当社の従業員がうつ病のため傷病休職中です。そろそろ当社が定めた休職期間が満了しますが、主治医の診断書等を見る限り、休職前の通常の業務に戻ることができる程には回復していないようですので、当社の就業規則に基づき、休職期間満了に伴い退職扱いとするつもりです。何か問題があるでしょうか。

【A】
会社は、休職期間満了時に従業員を退職扱いとする前に、その従業員が希望する場合には、原則として、同人を従前の業務よりも軽易な業務に配置することができるかどうか検討する必要があります。そのような検討や軽減業務の提供をせずに退職扱いや解雇を行った場合には、その行為が就業規則上の要件を満たさないか、あるいは解雇権濫用として、無効と判断される場合があります。

(理由)
1 休職とは、労働者を就労させることが不適当な場合又は不能な場合に、使用者が、労働契約を存続させつつ、労働者の労働義務を一部免除するか、あるいは、就労を禁止することをいいます。私傷病(業務に起因しない傷病のことです)の療養を休職事由とする休職は、会社による解雇猶予のために設けられた制度とされています。

2 多くの就業規則では、私傷病休職の休職期間中に傷病が治癒すれば復職となり、治癒しなければ自然退職あるいは解雇となる旨の規定が定められています。そこで、休職期間の満了時に復職可能かどうかをめぐり争いが起こることがあります。

3 その点については、最高裁判所の平成10年4月9日判決・片山組事件を機に、裁判例の多くは、少なくとも職種の限定なく採用し、配点可能な部署を持つ一定以上の規模を持つ企業においては、傷病休職期間の満了時において、従前の業務に復帰できる状態ではないが、より軽易な業務には就くことができ、本人も軽減業務での復職を希望する場合には、使用者は現実に配置可能な業務の有無を検討する義務があると判断するようになりました。
なお、上記のような会社の義務の程度・内容のうち、メンタルヘルス不調者の復職に関しては、厚労省「職場におけるメンタルヘルス対策支援委員会職場復帰支援部会」による平成16年10月14日付「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が問題点をかなり網羅的に論じています。

4 もっとも、中小企業の中には、会社の規模上、従業員に軽減業務を提供することが困難な場合もあると思います。そのような場合に、どのような点を考慮し、どのような措置を講ずれば退職扱いや解雇が有効となるのかについては、個々のケースで具体的に判断する必要がありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

以 上